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LARS JANSSON TRIO LIVE [JAZZ]

先日、ラーシュヤンソントリオのライブにいった。

僕がラーシュヤンソンを知ったのは数年前。
行きつけのレコード屋の店主から「蟹道楽好みのピアニストだよ!」ということで
紹介されたのだった。

ラーシュヤンソンはスウェーデン人のピアニスト。
いかにも北欧のピアニストらしい繊細なピアノを弾くのだが、いわゆる北欧JAZZの
ような「ジメっとした湿気感」が無いのである。

僕にとってラーシュヤンソンの一番の魅力は美しいメロディー。
叙情的で美しいメロディーを作らせたらラーシュヤンソンは天下一品である。

一般的にJAZZにおいて、叙情的で美しいメロディーばかり聴かされると飽きてくる
のだが、ラーシュヤンソンに関しては不思議にまったく飽きないのだ。

この度、僕は初めてラーシュヤンソンを生で聴くことができた。

会場は大阪の阿波座にあるKOO'ON(空音)という新しいホール。
僕はこのホールを初めて訪れることもあり、この日のライブは楽しみだった。


会場は地下にありエントランスも洒落ている。

  KOO'ON 1.jpg  KOO'ON 2.jpg

開場が始まりこのホールに入った。

会場はミニマムな空間で客席数も100名程度。
ステージもグランドピアノ、ベース、ドラムが横に並べば精一杯といった感じだ。

僕は会場に入って、まず感じたことがあった。

『このホールは音が一体化して弾丸のように攻めて来る!』

今までこのようなホールでピアノトリオを聴くとドラムとベースの爆音がピアノ
に勝ってしまうのである。

特にラーシャヤンソンのような繊細なピアニストではピアノを十分に楽しめない
のではないか?と感じてしまったのである。

さて開演時間の7時30分になり、会場のライトが消された。

すると突然、大音響で・・・


「Ladies and gentlemen!
 welcome to the KOO'ON・・・」

とアナウンスが始まったのだ。

これには拍子抜けしてしまった。

BlueNote等の会場ならまだしも、この様な雰囲気で小さなホールには似つかわしく
ないアナウンスなのである。
(ちなみに悲しいかな、アナウンスは2ndステージの開始時にも行われた・・・)

そしてメンバーがステージに登場した。

  ラーシュヤンソントリオ.jpg

ピアノのラーシュヤンソンは音楽家というより医者か大学教授といったイメージ。
ベースのクリスチャン・スペリングは貧弱なシュワルツェネッガー、
そしてドラムのアンダーシュ・シェルベリは左官屋のおっちゃんという風貌だ。

しかし、このトリオは凸凹の外観とは裏腹に緊張感と洗礼された演奏なのだ。
特にラーシュヤンソンのアドリブの美しさには魅きこまれてしまった。

ラーシュヤンソンはホスト精神が旺盛で観客に向かって懸命にコミュニケーション
をとろうとしていた。
しかし、僕はもちろん約100人の観客のほとんどが英語が解らないようだ。

そのため、ほとんどの場合の観客の反応は「・・・・・」という悲しいものである。

とはいえ、もちろん我々観客側も一生懸命彼の言うことを理解しようとする。
そのため、ラーシュヤンソンが笑うと、『笑っとるから一緒に笑ったろか・・・』
という使命感で一緒になって笑うのだが、笑いが途切れると会場全体が『し~ん』
と静まり返り、なお一層の寒々とした空気が流れるのである。

JAZZの場合、外国人ミュージシャンの日本でのライブのスタイルとしては、キース
ジャレットのように、ミュージシャンは観客とのコミュニケーションは最小限にして
ミュージシャンが演奏に没頭するほうがミュージシャンも観客も幸せなのかもしれ
ない。

ちなみに、彼の話で解った話は1歳になる孫娘が可愛くてしかたがないという話。

ラーシュヤンソンはその彼女に作った曲を本当に気持良さそうに演奏していた。


また、最初に会場に入って予感した『音が一体になって弾丸のように攻めてくる』
感覚は全く気になることはなかった。

これは会場のPAも優れていたのだろうが、やはりラーシュヤンソンの演奏にあったの
ではないだろうか。
ラーシュヤンソンの演奏は叙情的で美しいピアノだが、実際にライブで聴いたピアノ
は躍動感あふれ、力強いタッチでリズムセクションに絡んでいたのである。

CDで聴くラーシャヤンソンの演奏で北欧的な「ジメっとした湿気感」を感じなかった
のも、そもそもスイング感があるピアニストだったのだろう。


ライブの後、サイン会が行われた。

  サイン.JPG

 

サインをもらい握手をしたラーシャヤンソンの手は分厚く温かかった。

 

 

 

  KOO'ON 3.jpg

 

 

 LARS JANSSON TRIO  /  hope

  hope.jpg 

 


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〇〇生まれ [JAZZ]

先日、京都の親戚から『千寿せんべい』を頂いた。

 千寿せんべい.jpg

僕は醤油や塩味の”せんべい”が大好きだ。

『千寿せんべい』は”せんべい”という名前だが一般的な醤油や塩味のせんべい
とは別物である。

具体的にはクッキー状のものに固めのクリームがサンドされているお菓子である。

文字で書くと純粋な洋菓子。

また、実際に一つ一つの食材を見ても洋菓子にしか思えない。

しかし、『千寿せんべい』はデパートの菓子売場やギフト商品でも和菓子として売ら
れている。

そして不思議なことに、食べてみると洋菓子ではなく和菓子に感じるのだ。

やはり、和菓子会社から生まれてきた『千寿せんべい』は和菓子としてのDNAを
持っているからだろうか。

 


ANDREA POZZA TRIO / Drop this thing

少々前に買ったアルバムだが、いまだによく聴いているCDである。
ANDREA POZZA はイタリア人のピアニストである。
一般的にヨーロッパジャズといえば、澤野工房を代表するような叙情的なジャズ
が多い。

僕はヨーロッパ系ジャズが大好きなのだが、BLUE NOTE 等が好きなコテコテの
ジャズファンはヨーロッパ系のジャズが苦手という事をよく聞く。

僕の行きつけのレコード店の店主はコテコテのジャズファンである。
実際、この店主も「ヨーロッパ系ジャズは湿っぽくてねぇ・・・」と言うようにリリカルな
ヨーロッパジャズがあまり肌に合わないようだ。

しかし、一時期このアルバムは行きつけのレコード店でよく流れていた。
ヴォーカル入りの曲が多いこのアルバムは従来のピアノトリオやボッサ風と多様な
曲調で構成されているのでBGMとして良かったのかもしれない。

ANDREA POZZA はヨーロッパ系ジャズ特有の官能的というか叙情的なイメージ
をあまり感じない力強い演奏である。
とはいえアメリカのジャズとは明らかに感触が違うのだ。

やはりイタリア生まれのヨーロッパ系ジャズのDNAを持っているのだろうか。

ANDREA POZZA の演奏からは、ヨーロッパ特有のピアノを感じるのである。

 

 listen.gif Nebulosa            
 listen.gif You can't get what you want  
 listen.gif Alice in wonderland           
 listen.gif Drop this thing 
 listen.gif Push the pedal 
 listen.gif Perfect day 
 listen.gif Like in Nigeria 
 listen.gif And it all goes round and round 
 listen.gif How do you call it ? 
 listen.gif Sir pent


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Yesterdays [JAZZ]

コンサートや演劇等、いわゆるライブが好きな人は解って頂けるのではないだろうか。

オープニングの瞬間の緊張感や高揚感!

あの感覚がある限りコンサートはやめられない。


レコードを自由に買えなかった学生の頃、好きなミュージシャンの新譜を購入して
レコードに針を落とす時、コンサートほどではないが緊張感や高揚感があった。

以前にも書いた事があるが大人になり、ある程度自由にCDを買えるようになって
一枚のアルバムの『ありがたみ』が薄れてしまった事と同時に自分の感性が鈍って
きたのかもしれない。

思い入れの強いミュージシャンでも以前ほど、ニューアルバムを聴いて心ときめく
事も少なくなってきたようだ。


Keith Jarrett のニューアルバムを発売日に購入した。

Yesterdays  /  Keith Jarrett

Yesterdays

Yesterdays

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ECM
  • 発売日: 2009/01/27
  • メディア: CD


僕にとってKeith Jarrett は常にニューアルバムを待ち望むミュージシャンの一人
である。
ニューアルバムを聴く度に「素晴らしい!」と感じるのだが最近のアルバムは以前
ほど、気持ちの高揚感が感じられないように思っていた。

しかしこの度のニューアルバム『Yesterdays』は見事に”来た!”のである。

アルバム1曲目の『Strollin' 』。
CDの再生ボタンを押して23秒後!久しぶりに”あの高揚感”をあじわうことが
出来たのである。

『Strollin' 』はジャズピアニストの Horace Silver の名曲である。

Horace-Scope / Horace Silver
 
ホレス・スコープ
  • アーティスト: ホレス・シルヴァー,ブルー・ミッチェル,
  • ジュニア・クック,ジーン・テイラー,ロイ・ブルックス
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2008/06/25
  • メディア: CD

Horace Silver はもっともブルーノートらしいミュージシャンでファンキージャズ
の代表的なピアニストである。

Keithはこの対極的とも思われるミュージシャンのファンキーな原曲の魅力を全く
失わせる事なくKeithならではのフレーズで演奏しているのである。

1曲目良ければ全てよし!

コンサートでもアルバムでも1曲目の印象というのは本当に重要である。
1曲目で魅きつけられると、それ以降の期待度も増して聴く気合も変わってくる。

このアルバムは2001年4月の東京公演を収録したライブ盤である。
Keithが慢性疲労症候群という難病を克服して復帰後の公演である。
この頃からKeithの演奏は、80年代の演奏のように極限まで研ぎ澄まされた
演奏に比べて肩の力が抜け、リラックスした演奏のように感じるのだ。

この『Yesterdays』は久しぶりに一気にCD全曲を聴き通したアルバムだった。


ただし一つだけ、気になるところがあった。
アルバムの最後にボーナストラックとしてオーチャードホールのサウンドチェック
用の演奏『Stella By Starlight』が収録されているのである。

非常に貴重なトラックである。
しかしライブアルバムにこの様な異質なトラックを収録して欲しくないのだ。
ライブアルバムはやはりライブで終結してもらいたい。
アルバムとしてのトータル性を考慮して欲しいのである。

ECM(レコード会社)もその辺の事を考慮したのか、このボーナストラックの前
に約15秒の無録音状態をつくっている。

それなら価格アップしてもボーナスCDとして収録して欲しかったものだ。

とは言っても、このサウンドチェック用トラック『Stella By Starlight』は興味
深い演奏である。

Keithの『Stella By Starlight』といえば1985年の名盤『Standards Live』
のオープニングを飾る名演がある。

Standards Live

Standards Live

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal/Polygram
  • 発売日: 2008/08/26
  • メディア: CD

 

先に書いたようにKeithだから成し得た極限まで研ぎ澄まされた演奏である。

この度のサウンドチェック用のトラックは、これとは対照的な演奏で良し悪しは別
にしてKeithのリラックスした演奏が聴けるのである。

 

うれしいことにこの度はアナログも発売される。

Yesterdays [12 inch Analog]

Yesterdays [12 inch Analog]

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ECM
  • 発売日: 2009/02/09
  • メディア: LP Record

 

 

 

学生時代、新宿厚生年金会館で観た”Keith Jarrett Standards Live”


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神戸のレコード屋 [JAZZ]

『りくろーおじさんのチーズケーキを買ってこい!』との指令をうけた。

 20090116(003).jpg
 
りくろーのチーズケーキは難波や梅田で買っていたが最近、三宮そごうに出店した
ため神戸でも買えるようになった。

しかしデパートの地下の小さな店舗のため、タイミングにもよるが難波店のように 
いつでも焼きたてを購入する事は出来ない。 
 (結局、家に持って帰れば冷えているのだが・・・)

 

そのついでに久しぶりにタワーレコード神戸店に行ってきた。

 20090116(001).jpg

以前、神戸店は三宮センター街あったが、駅前のテナントビルに移転してからは
一度も訪れたことがなかった。


僕が初めてタワーレコードに行ったのはタワーレコード渋谷店。
大学受験で上京した時の事、現在の渋谷店とは違いの渋谷のセンター街を抜けた
宇田川の店舗だった。
 
その時は輸入盤専門店として店舗の広さとLPの多さに驚いた。
 
そして黄色と赤でデザインされたロゴのネオンやレコード袋、また店舗の隅に山積
された輸入盤のダンボール箱の光景にアメリカを感じたものだった。
 
僕は大学生になり東京に住むようになってからは、週に一度はタワー渋谷店に通う
ようになった。

そのためにバイト代の半分以上がレコード代で消えていった。

この頃、僕はタワーレコードで気になっていた事があった。
レコードの量は多いがあまり整理がされていなかったのである。

ある日、タワーレコードのバイト募集の張り紙を見つけた。
 
「そうだ!タワーレコードでバイトをしよう!」
「そして、売り場を整理するのだ。」
「趣味と実益が一致した魅力的で理想的なバイト先ではないか!」

そう考えた僕は面接に行ったのだが、時給の安さと週6日の勤務という労働条件
でタワーレコードのバイトを断念したのだった。
 
考えてみればタワーレコードとは長い付き合いである。
そもそも、今でも”レコード”という名前が残っていることに愛着を感じる。
そう、あの頃は『レコード屋』と呼んでいた。

僕が学生時代は東京にしかなかったタワーも今や全国津々浦々に店舗がある
ということは、たいへんにありがたい。

僕はかなりマイナーなレコードやCDは行きつけのジャズ専門の店で購入している
がそれ以外のものは大体、タワーレコードで購入してきた。
また、僕の場合は一般の人に比べると少々マイナーなCDを買うため、ある程度の
品揃えの店舗でなければ店に入る気も薄れてくるのである。
 
そのような事もあり、タワーレコード神戸店には立ち寄る機会も少なかったのだ。
 
新しい神戸店は以前よりスペースは広くなったが梅田店や難波店にはかなわない。
品揃えも以前よりは良くなったが、『当たり前のCD』(大型店として揃えているのが、
当然のCD)を揃えるだけで精一杯といった感じである。

ところで、新しい神戸店にはラウンジスペースがあった。

神戸のCDショップとしては一番広いのだろうが、梅田店や難波店のような大型
店舗に比べるとやはり狭いスペースなのだ。

ラウンジスペースでお洒落な演出をしたいというのも解らないではない。
しかし僕にとってタワーレコードといえば、学生時代の渋谷店のように雑踏とした
中でLPが大量に置かれている無骨でアメリカ的なイメージのほうが落着くのだ。

また、神戸店はタワーにとって地方店の一つかもしれない。
しかし、地方店といえども神戸の店なのだ。
小さくても特徴のある(神戸らしくJAZZの品揃えを充実した)店にするとか・・・
ぜひとも、頑張ってほしいものである。

 


ということで、『当たり前にどこでも売っているCD』を買って帰った。
Five For Fun / High Five (High Five Quintet)

ファイヴ・フォー・ファン(6ヵ月限定スペシャル・プライス)
  • アーティスト: ハイ・ファイヴ
  • 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
  • 発売日: 2008/11/19
  • メディア: CD

スイングジャーナルのゴールドディスク選定盤である。
 
とはいえ、スイングジャーナルのゴールドディスクに選定されなかったらマイナー
なイタリアジャズのCDとして扱われたかもしれない。
ヨーロッパ系ジャズといえば繊細である種、”静か”な演奏が多い。
しかし、このバンドはファンキーなハードバップを演っているのである。
また、時折ヨーロッパ特有の哀愁感漂うメロディーも聴かせてくれるのだ。
特に2曲目の”Ojos De Rojo ”のサックスのフレーズは僕好み!
このアルバムはJAZZをあまり聴いていない人も楽しめるアルバムだと思う。


現在、この日本盤CDは期間限定特別価格盤として¥1,980で売られている。
 
タワーの手書きのPOPには『特別価格!輸入盤より日本盤のほうがお得ですよ!』
と書かれてあった。
 
さすがに、輸入盤店らしいPOPだった。


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大阪フェスティバルホールよ永遠に [JAZZ]

キースジャレットのソロピアノコンサートに行った。

現在の大阪フェスティバルホールでキースを聴くのもこれが最後。

大阪フェスティバルホールは今年の12月迄で解体され生まれ変わる。

あの山下達朗は「大阪フェスティバルホールを壊すことはカーネギーホールやオペラ座
を壊すことと同じようなもので愚行である。」と言っていた。

その位、最高の音響と存在感でクラシックを中心に世界中の音楽家から愛されてきた。

僕もこのホールで数え切れないくらいのコンサートを体験した。

このホールでキースを聴くのもこれが最後・・・・・

フェスティバルホールを見上げると多少寂しい気持になってしまった。

 フェスティバルホール1.jpg フェスティバルホール2.JPG

 

 エントランス・ロビー.jpg パブ .jpg

※大理石の柱とシャンデリアが連なる赤ジュウタンのエントランスロビー。
※二階のパブでコンサート前や休憩時間に一杯飲む酒は至福の時だった。

 

 

以前の記事でも書いたが、キースのソロコンサートには一切、楽譜はない。
完全な即興演奏(インプロビゼーション)によるコンサートである。

コンサートは前半5曲、後半4曲+α、アンコール3曲という短い曲で構成されていた。

キースはこの度のコンサートで観客に対してかなりのコミュニケーションをとっていた。

即興という初めて聴く曲のため観客は曲の終了が解り難い事がある。

『終わったかな?』という感じで控えめな拍手をしているとキースは客席に向かい笑顔で
『拍手していいんだよ!』というジェスチャーをするのだ。

また、この日は咳払いをする観客が多かった。

すると、曲の合間にキースは笑顔で『今なら咳もOK!』とか『準備はいいかい?』
というように観客に対して語りかけてくるのである。

キースとしては短い曲が続き、多少戸惑っているうちに前半は終了した。
20分の休憩を挟んで始まった後半のコンサートからは完全にキースの世界に引き込まれた。

そして3曲目・・・そう、待ち望んでいた旋律をキースが弾きはじめた。
キースでしか弾けない美しい旋律。
観客全員が身構えてステージに集中していたその時・・・

『ゴッホ!』 (右サイドより)

『ゲボッ!』 (左サイドより)

と、大きな咳払いの2連チャンが入ったのである。

キースは演奏を止め、客席に向かって『かんべんしてよ!』と言わんばかりに両手を広げた。

『う~ぁ、最悪や!』 と思わず僕はつぶやいてしまった。

会場全体も同じ気持だったのだろう、 『あ~ぁ・・・』と大きな溜息を漏らした。

その曲は、会場の全員が悔しがるほど美しく甘美な曲だった。
しかし、即興という”その瞬間だけの音楽”は二度と同じ曲の再現はない。

しかし、この日のキースの機嫌は悪くなかったようだ。
またもや、キースは客席に向かって苦笑いしながら『今のうちに咳払いしておいて!』と
いったようなジェスチャーをした。

そして、またキースはピアノに向かった。
途中で途切れたイメージを修復しているのであろうか、または新しいイメージを創り出して
いるのか、しばらくピアノの前で瞑想していた。

一切の雑音が無くなったホールで再び演奏が再開した。
ここからはキース特有の清らかな曲からブルースビートまで、時を忘れてしまう演奏だった。

キースのコンサートでは聴き手もかなりの緊張と集中力でコンサートに向合っている。
演奏中、2,700人の観客は物音一つたてず、固唾を飲んで聴き入っているのである。
聴衆も鬼気迫る緊張感が漂っているのである。

このような事を書くと、『コンサートで緊張なんかしたくない』と感じるかもしれない。
また、『音楽とは気持ちよく聴くものだろう』と言う人もいるだろう。

確かにその通りだ。

しかし、『楽しい、気持ち良い』という事を超えて極めた世界には次元の違う感動がある。

僕、個人的にはキースはパウエル、モンク、エバンスといったジャズピアニストの巨匠を
超えた存在だと思っている。

キースは今やクラシックや現代音楽界でも一目置かれた最高のピアニストである。

そのキースのコンサートは素晴しいに決まっている。

しかし、このフェスティバルホールに訪れた観客はそれ以上の演奏を求めてホールまで
足を運んでいるのだ。

だから一音たりとも聴き逃すまいと張りつめた緊張感があるのだ。

そしてキースは極限まで自分を追い込んで演奏をしているのである。
その結果、信じられないほど美しい旋律を聴かせてくれ感動を与えてくれるのだ。


アンコールの一曲目。
キースらしい曲の流れで始まったこの曲はまさに僕がキースに求めるものだった。
感極まった訳でもないが視野がかすんで、唇の端にしょっぱい感覚を感じた。

自分を極限まで追い詰めた演奏と聴き手の求めるものや緊張感が一体になった時、
特別な感情になって、自然と涙が流れてきたように思う。

アンコールからは会場の半分以上の人達と同じように僕も無意識にスタンディング
オベーションを送っていた。


このコンサートはレコーディングをしていた。

CDとして発売されるか否かは解らないが、後日この日の演奏をCDで聴いても
あの会場でうけた感動的な気持にはならないだろう。

あの時の会場全体に漂う緊張感はCDでは絶対に表現できない。

   

大阪公演は必ずフェスティバルホールで行ってきたキースジャレット。

コンサートの最後は「Over The Rainbow」で締めくくった。

最後にキースがフェスティバルホールにこの曲を捧げたような気がした。

  

   kieth.jpg

 

    

 


僕が初めてキースのソロコンサートを体験したのは20年以上前、サントリーホールだった。
その時の演奏がCD化されている。
アット・サントリー・ホール~ダーク・インターヴァル

アット・サントリー・ホール~ダーク・インターヴァル

  • アーティスト: キース・ジャレット
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1997/08/25
  • メディア: CD

 

 


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嗚呼、哀しきポストカード [JAZZ]

全国のレコード屋(特に量販店や中古屋)で共通のことがある。
レコード屋に頻繁に行く人は感じているのではないだろうか。

その一つ。
店員はロックバンドをやっているような風貌の兄ちゃんや姉ちゃんが多い。
 
そしてもう一つ、総じていえることは・・・

「店員の多くは無愛想である」

マクドのような『スマイル¥0』など無縁の世界。


山中千尋のニューアルバムが出た。

アフター・アワーズ~オスカー・ピーターソンへのオマージュ 

  アフターアワーズ.jpg

先日亡くなったオスカーピーターソンのトリビュートアルバムである。
 
先日、某レコード量販店で購入した時のこと・・・

CDには『初回特典、ポストカード付き』というシールが貼ってあった。
量販店は、よくある事でレコード会社からの販促用品を捌いているのだろう。
あまり気にすることなくこのCDをレジに持っていったのだった。

その日は平日で客も少なく、レジにはネエチャンが1人しかいなかった。
ところが、珍しい事にこの日のネエチャンは明るく愛想が良かったのだ。
 
僕がレジに持っていった山中千尋のCDに貼ってある『特典シール』を見て
「少々お待ちください!」と明るく笑顔で言うのである。

『ここはマクドか?』 と思ったほどである。
 
レジの後ろにはボックスがありCDの特典やいろいろなグッズが収納されている。
ネエチャンはそのボックスをゴソゴソ探し始めたのである。
しかし、千尋ちゃんのポストカードがなかなか見つからないようだ。
僕を気にしてか、何度も振り向いて「もう少々お待ちください」と笑顔で言うのだ。
 
探し始めて3分位経った頃、レジを待つ列が出来てしまったのだ。
 
僕は特にポストカードが欲しいわけではない。
「もう、結構ですよ」と僕はネエチャンに声を掛けた。
しかし、ネエチャンは「確かあったんですけど・・・」と探すのを止めない。
 
レジに並んだ客が明らかにイライラしている雰囲気が漂ってきた。
 
さすがに僕もイライラしてきたので「もう、ホントにいいですよ!」とネエチャンに
言うと申し訳そうに「すみません」と言ってレジに戻ってきたのだった。
 
ところがレジを再開したと思いきや、ネエチャンは「あっ!」と言いながら

またボックスの中を捜し始めたのである。

 
「お~い!ええかげんにしてくれ~!」と思っていると
・・・


 
「ありました~!!!!!」
 
ネエチャンは声を上げたのだ。
 
「これです!これです!」

とネエチャンは満足げに千尋ちゃんのポストカードを高々と持ち上げたのである。

 千尋ちゃん.JPG

 (問題のポストカード  )

レジを待つ客から一気の注目を浴びる山中千尋のポストカード


『ひえぇぇぇ~ 何てひどい事すんの!~』

『キミ、それは反則や!恥ずかしいやろ!』

『まるで僕が千尋ちゃんのポストカードを欲しがってると思われるやろ!』 


中高生がアイドル歌手のCDを買って特典のポスターを嬉しそうに持って帰るのなら
まだ可愛げもある。
 
しかし、40過のオヤジがアイドルのブロマイドを待っているのと同じなのだ。
 


そして、このネエチャンは僕にトドメをさしたのである。


「傷まないように、ビニールにお包みしますね!!!」


と笑顔でと嬉しそうにビニールで包んでくれた。


『頼む!頼むから早くレジ済ませてくれ~!』


そして『お待たせしてすいませんでした!』とネエチャンは笑顔で言った。
 
僕はレジから逃げるように去った。


目は口ほどにモノを言う・・・

帰り際、レジを待つ人達の目が語っていた・・・


『ええ年こいて、女の写真を欲しがるなよ!』


やはりレコード屋の店員は無愛想でいいのだ。

 

 

先日、山中千尋がTBSの番組『R30』に出演した。

『八木節』のジャズバージョン。
桐生出身の山中千尋が昔から好んで演奏している。
ショートカットにした千尋ちゃん!
この日の演奏は特にパワフルで楽しそうである。


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哀しみの説明会 ~閑古鳥に会った日~ [JAZZ]

ただ今、リクルーティングの真っ最中である。

近年、学生の就職活動は年々早くなり3年生の1~3月頃がピークである。

また、最近はネットの普及によりリクルーティングの方法がかなり変化してきた。
 
主流はリクナビ、毎コミといった大手就職サイトでの活動になる。
最近の学生はほぼ100%これらの就職サイトを利用して就職活動をしている。


リクルーティングの流れを簡単に説明すると、

①リクナビ、毎ナビといった就職サイトに企業登録をする。
 (この基本料とオプションで300万円以上になる!)

②サイトに登録している学生(学生は無料)に、会社はメール等によりアプローチをかける。

③学生は志望の会社や興味を持った会社にどんどんエントリーする。

④エントリーしてきた学生を集めて数回の会社説明会を開催する。

⑤その後、何度かの面接、筆記試験そして最終役員面接を行う。

⑥そして合否の決定!

  めでたし、めでたし!・・・お疲れさん!・・・

  ・・・では終わらないのだ。ここからが勝負なのだ!

⑦採用内定を出した学生を”口説く”のである。

 これが、一番の難関なのである。

 「君のような優秀な人材が会社には必要だ!一緒にがんばろう!」
 「我が社は堅苦しくなく何事もオープンな雰囲気の会社だ!」
 「管理職を筆頭に先輩社員も親身で頼りがいのある人ばかりだ!」
 「我が社には美人が多い! と言われている・・・」・・・・・等々
 
おだて~誇張~小ウソ~大ウソを駆使して何とか入社させるのだ!
 
今は④の会社説明会で終盤の時期になった。

会社説明会は50名以上の学生を集めて会社をアピールするのである。
 

先日、僕は仕事では縁の無い総務次長に呼ばれた。

総務次長の席に行くと役員の大T部長が一緒に僕を待っていた。
あちゃ~、イヤなコンビである。
大T部長は当社会長のご親戚である。
そのおかげで取柄は無いが役員になったという評判だ。

仕事も少ないのか、いつも"暇そう"余裕をもっている・・・・・

その彼の生きがいは年に一度の新入社員研修の講師なのだ。
一応役員だが普段、社員から相手にされていない・・・
しかし、何も知らない新入社員は”役員として”一生懸命に大T部長の話を聞くのだ。
 
その暇な、余裕のある大T部長が会社説明会に目を付けてしまった。
 
 
大T部長 : 「蟹道楽クン、私が会社説明会をお手伝いするよ!」       
 
蟹道楽  : 「いえいえ”お忙しい”でしょうからご無理をなさらないで下さい。」
      
(蟹本心) : (くだらないヨタ話を聞かされば学生が逃げてしまう!)

総務次長 :  「蟹道楽クン、せっかくの大T部長のご好意は受けるもんだよ!」
          「大T部長、ぜひともお願い致します!」

あ~ぁ、いつもながら総務次長が勝手な事を言っている・・・・・
ちなみにこの総務次長は”社内営業”に命をかけているおっさんだ。
彼は女子社員の選ぶ「ヒラに降格すべき社員」で堂々のトップに選ばれているらしい。

大T部長 : 「学生相手の会社説明会と言えども、役員が行けば説得力があるだろう!」
          「”忙しい”が、学生達に当社の魅力を十分に語るから!ハハハ!」

         「ところで日程は来週の金曜日が空いてるからその日にしたまえ!」
 
何ともまあ、身勝手な無茶苦茶な話である。

蟹道楽   : 「そんな急に言われても学生は集まりませんし無理ですよ!」

総務次長 : 「おい、蟹道楽!大金をかけてインターネットで求人をかけてるだろ!」
         「大T部長、お任せ下さい!私が責任持って仕切りますから!」

あ~ぁ、なんという調子の良さ・・・何も解ってない総務次長が安請負してしまった。


大T部長 : 「ところで会社説明会の場所はどこだ?」
 
蟹道楽  : 「当社の大会議室です」
 
大T部長 : 「アカン、アカン!最初の印象が大切なんだ!ホテルで開催するぞ!」


ホテル?

あほか!

あんたの頭はまだ、バブル期か?

経費の無駄じゃ!


しかし、総務次長は「解りました!ホテルを予約しましょう!」と答えている。

という事で人事部を無視した会社説明会が開催されることになった。
 

・・・そして会社説明会2日前の日、総務次長がやって来た。
 
総務次長 : 「蟹道楽。大T部長の会社説明会、学生の申込は何人だ?」
 
蟹道楽  : 「9人ですわ」
 
総務次長 : 「・・・はぁ・・・109人?」
 
蟹道楽  : 「ちゃいます!ただの9人です!!」
 
総務次長 : 「・・・・・・・、9人?ど、ど、どうするんだよ!」

        「大T部長が説明するんだぞ!」
        
「9人じゃ、オレの面目丸潰れじゃねえか!」


『オレの面目』でリクルーティングをしないで欲しい!

 
 
当たり前の結果なのだ。
”ネットを使えば無限大に会社をアピールできる”と勘違いをしているのだ。
確かに全国津々浦々の学生にメールの発信は出来る。
しかし、当社だけではないのだ!
全国の会社が同じように大量のメール発信をしているのだ!
この2,3年は以前のような就職氷河期とは違い、大企業が大量の新卒を採用している。
その結果、会社を選ぶ学生は有名企業や超大手の企業からのメールしか見ないのだ。

だから、我々人事部はエントリーしてくれた学生一人一人を大切にしているのだ。
メールは便利だが、実際に会ったり、電話で話しをするような”生の声”が聞けない。
その結果、会社も学生も”ドライで割り切った付合い”になってしまう。
ネットの普及によりリクルーティングは非常にやり難くなった。


結局、この会社説明会の申込数は11名、欠席者は4名。
その内、2名は無断で欠席。(無断欠席というのがネットリクルーティングの特徴だ)

さて、大T部長様による”スペシャル会社説明会”が始まった。

ホテルの大広間!

総務次長の発注した、広~い会場に大量の机とイス。

そして7名の学生達。 

哀しい・・・・・

あまりにも哀しすぎる光景である・・・・・

 

大T部長の立つステージには、これまた総務次長が頼んだ立派な金屏風があった。
この大きく立派な金屏風がなお一層、深い哀しみを醸し出していた。

こんなに哀愁の漂う会社説明会は初めての経験だった・・・・・

そして、会社説明会は厳かに終了した。

学生が帰り社員だけになった大広間に大T部長の怒鳴り声が響いた!

大T部長 : 「どうなってるんや!ワシは大恥かいたやないか!」

総務次長 : 「あぁぁぁぁぁぁ、~す、すみません!・・・・・・」

烈火のごとく怒る大T部長は総務次長を怒った。

そして締めくくりに~

大T部長 : 「今度、大連事業部(中国)に管理部門を置く計画があるんや。」
                 「総務次長は大連で基本からやり直したほうがエエんとちゃうか!」

吐き捨てるように大T部長は会場を去って行った。


青ざめた総務次長・・・・・

しばらく黙っていた総務次長がやっと口をひらいた。

総務次長 :  「大連、冗談じゃない!オレは東京に帰るんだ・・・」(彼は東京出身)      

蟹道楽  :  「大丈夫ですよ!大T部長にはそんな人事権はないですから」

総務次長 :  「馬鹿やろう!何といっても会長の親戚なんだぞ!」
                「それと、あの男はヘビのように執念深いんだよ!」
                「そもそも、協力的でなかったお前が悪いんだ!」
                「お前が無能だから、こんな事になっちまった!」

ついに僕に責任転嫁を始めたのである。
少しは気の毒に感じていたが、アホらしくなってきた。

蟹道楽  :  「大連といっても関空から2時間ほどですよ!」
         「新幹線で東京に帰る時間と変わりませんよ!」

この瞬間、総務次長の顔が鬼のような形相になった。

総務次長 : 「蟹道楽・・・オレはお前の事が好きじゃないが・・・・・」
         「オレが大連に行く時は、絶対にお前を一緒に引っ張ってやる!」

         
はぁぁぁ・・・・・ 疲れた・・・

 


そうだった。

この総務次長は社内で一番執念深いヘビのような男なのだ。

  

この度の一番の被害者は「自己満足」や「面目」の犠牲になった学生達である。
この7名の方々を僕は精一杯フォローしていかなければならない。

                         

区切りの紹介アルバムはやはり蟹道楽のシンボル!
チェット・ベイカー・シングス

チェット・ベイカー・シングス

  • アーティスト: チェット・ベイカー,ラス・フリーマン
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/04/26
  • メディア: CD

20年以上前、廃盤で幻のアルバムと言われていたこのLPが再発売された時
の興奮は忘れられません。
その時、購入したLPから勝手に僕のテーマソングに決めている曲を!

It's Always You / Chet Baker

 

  

ブログを始めて2年2ヶ月、目標だった100記事を達成できました。
スローペースの達成ですが満足しております。
何度か挫折しそうになりましたが皆様のおかげです。

この100記事を区切りに少々お休みを頂こうと思います。

 

ありがとうございました。
                          あなたの蟹道楽より


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『Limited Edition』  やめられまへんな~ [JAZZ]

昔からよく言われる「無人島に持っていくアルバム」というものがある。

僕にとって"WALTZ FOR DEBBY / BILL EVANS"はその一枚だ。

 

ワルツ・フォー・デビイ+4

ワルツ・フォー・デビイ+4

  • アーティスト: ビル・エヴァンス,スコット・ラファロ,ポール・モチアン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2007/09/19
  • メディア: CD

今さら紹介する必要もないほど有名で大名盤である。
これほど芸術的でありながら誰でも解り易い平易さを兼ねている作品はざらには無い。
音楽好きならジャンル関係なく誰が聴いても美しいと感じるアルバムだろう。
また、まるでライブ会場にいるかのような素晴らしい録音なのである。

曲、演奏、録音、全て完璧な奇跡のアルバム。


無人島に持っていく一枚だから、もちろん思い入れが強い!

 waltz for debby.JPG

 

「お前はアホか!」 と思われるかもしれない。


今、手元にある”WALTZ FOR DEBBY”はLPを入れると全部で7枚。
アニキに寄付した日本盤CDと友人に貸したままのLPを入れると9枚も買っている。

しかしこの手元にある7枚の同一アルバムは全て違うのだ。

CDでは通常日本盤、輸入盤、そして高音質盤のK2盤、XRCD盤,K2HD盤、DSP盤。
そしてアナログLP。

通常盤CDと高音質CDでは、明らかに音質が異なるのである。
音質改善といったような半端な違いではない。
初めてCDで発売された通常盤とXRCD盤とは全く別ものである。

このように次々に発売されるリイシュー盤。


「愛聴盤がさらに良い音で聴ける!」という甘~い誘惑。

 

 ballads.JPG


小出しに発売される為、気が付けばこの様に重複したアルバムだらけである。


この度、SHM-CDというCDが限定で発売された。
SHMとは(S)スーパー(H)ハイ(M)マテリアル―CDの略らしい。

今まで、高音質CDは音圧・音質を調整するマスタリングで音質改良をしてきた。
この度のSHM-CDはCD本体の素材を改良したCD。
素材はポリカーボネイトという液晶パネルに使われている素材らしい。

方向性としてはCDの素材の透明性を高めてデータの読込む損失を少なくする。
CD本体の解像度を向上し、結果として通常のCDより音質が良くなるらしい。

 

「素材ねぇ~、何ともマユツバな」と思いつつも・・・ 

 alone.JPG

またまた”Bill Evans/alone”を買ったのだが・・・

 

「なんともクリアーな音!、これは、凄い!」

 

月並みな表現だがまさに”一枚ベールを剥がした”ようにクリアーな音なのだ。
このアルバムは1968年という古い録音でピアノはちょっとコモッた感じだった。
ピアノは特に録音の古いものほどコモりがちになってしまう。
しかし、今回のSHM-CDでは一世代新しいの録音のように聴こえるのだ。

改めて考えてみれば「曇ったメガネから透明度の高いメガネに替える」ようなもの。
当然、CDプレーヤーのピックアップがより正確にデータを拾い上げるのは当然のことだ。

 

と、言う事は必然的に”買い直すCD”が現れてくるのだ。

 

 Jazzジャケット.jpg

『アローン』  ビル・エヴァンス
『モントゥルージャズ・フェスティヴァル』 ビル・エヴァンス
『バラード』  ジョン・コルトレーン
『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』
『プリーズ・リクエスト』  オスカー・ピーターソン・トリオ
『スタディ・イン・ブラウン』  クリフォード・ブラウン
『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』
『ゲッツ / ジルベルト』  スタン・ゲッツ&ジョアン・シルベルト
『波』  アントニオ・カルロス・ジョビン

 

ああ、また出費が・・・・・

 

レコード会社はしたたかである。
このようなリイシュー盤は限定で発売するのだ。
この限定盤というのがミソなのだ。
何時、手に入らなくなっても不思議ではない。
そのため、無理してでも購入に踏み切ってしまうのだ。


このように高音質CDにリイシューされるのはジャズやクラシックばかりだった。

しかしこの度、SHM-CDはロック、ソウルの名盤シリーズも発売されたのだ。

しかも、やはり限定盤。

なんと罪作りな・・・・・


結局、この度僕が買った(買わされた)アルバムは・・・

 

『レット・イット・ブリード』  ザ・ローリング・ストーンズ

 レットイット.jpg
これは基本中の基本で外せない・・・


『彩(エイジャ)』『ガウチョ』  スティーリー・ダン

 エイジャ.jpg ガウチョ.jpg
この2枚も外す事は難しい・・・


『キー・オブ・ライフ』  スティービーワンダー

 キーオブライフ.jpg
名盤というのはこのアルバムの事をいうのだ。


『ホワッツ・ゴーイン・オン』  マーヴィン・ゲイ

 ホワッツゴーインオン.jpg
またまた名盤、このアルバムも買替え4枚目!


『悲しきサルタン』   ダイアー・ストレイツ

 ダイアーストレイツ.jpg
高学生の時この大名盤をMLという低脳雑誌は「音の博物館」とクサしていた。


『オリジナル・サウンドトラック』  10cc

 オリジナルサウンドトラック.jpg
よりクリアーな”I'm not in love"を聴ける!

 


ロック、ソウルの名盤シリーズもかなりの音質向上が確認出来た。
その中でも『キー・オブ・ライフ』と『オリジナル・サウンドトラック』の音質の向上は
感激ものだった。

このSHM-CDシリーズを聴いて特に音源の古いものにその効果を実感出来た。


気持ちよいクリアーな音!

気持ちよいほど、小遣いが無くなった・・・・・


いろいろな意味で目頭が熱くなったSHM-CDシリーズ。

良い音は大歓迎だが、同じアルバムを何度も買い替えするのは疲れた。

もう、過去の名盤のリイシュー盤はカンベンしてくれ!

 

ただし、”WALTZ FOR DEBBY ”はSHM-CDで発売してほしいものだ。

個人的にはマスターテープそのままのようなXRCD盤も素晴らしいのだが、
それよりもスコットラファロのベースが”ブルン”と鳴るK2HD盤のほうがより
好みなのだ。
「SHM-CD」+「XRCD盤かK2HD盤」の組合で”WALTZ FOR DEBBY ”
をぜひとも聴いてみたいものである。

 

さて、現在手元のある7種類の"WALTZ FOR DEBBY / BILL EVANS"。


一枚、無人島に持っていくなら僕はLPレコードを選ぶ。


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金儲けもいい加減にしなさい! [JAZZ]

昨年末、またまたジャコパストリアスの発掘盤がリリースされた。
 

    

  Jaco Pastorius / Live from the Players Club


1978年、ジャコがウェザーリポートに加入直後、故郷でのセッションである。
有名になったジャコが故郷に錦を飾ったという感じだろうか。

録音は観客がカセットテープ(モノラル録音)で録音したものらしい。
音質はブートレック(海賊盤)と同レベル。
特に客のおしゃべり(ノイズ)が耳につく。

ミキシングの段階でベース音をブーストしているのではないだろうか?
締まりのないベース音が目立って演奏のバランスが崩れているように感じる。

音質は正規のオリジナル盤とは言いがたいものである。

そして肝心の内容は、ジャコの演奏は”流している”ようにしか聴こえない。

これは聴く人の”想い”や”感覚”によってさまざまだと思う。
決して悪くはないが、しかしジャコ特有の躍動感が感じられないのだ。

しかし、CDの帯には何ともオーバーな事が書かれているのだ。


”1978年、ジャコは世界の頂点に立っていた・・・・”


可愛らしいジャケット(カンベンして!)と”世界の頂点”とまで記されている帯。

しかも、このCDはタワーレコードで”注目の新譜”として堂々と飾られている。


ジャコも今やビックネームのミュージシャンの一人である。
ジャコを知らない若い世代のファンも確実に増やしている。

ジャコ初心者が何も知らずに「ジャコの新譜」と思ってCDを購入したら・・・
 

「なんじゃ、このCDは!」 とがっかりするのではないだろうか?


この音質の悪さは昔のブートレック盤を聴き慣れた人でないと無理だろう。

天才ジャコとの出会いがこれでは悲劇きわまりない。


我々のようなファンにとって、このCDは涙モノのアルバムである。
ただし、僕はこのような音源を広く一般に販売することに抵抗を感じる。
以前も書いた事なのだが、このようなCDはコアなファンが高い金を払って海賊盤
として買うようなアルバムなのだ。

このアルバムは、ジャコオフィシャルサイトの公認作品とされている。。
そこまで書くのならオフィシャルブートレックとして通信販売すればいいのだ。
僕に限らず倍の値段を払ってでもこのアルバムを購入するファンは多いと思う。
 
これも以前も書いた事なのだが、ミュージシャンの意思を無視たような作品を
オフィシャル盤として広く一般に曝すことは止めて欲しいと思う。

一枚のアルバムはミュージシャンが試行錯誤して作り出したもの。
特に天才と言われる人の作品で本人の許可無しに”未完成品”を一般公開する
ことは立派な名誉毀損である。

天才といわれる人に限って凡人では考えもつかないこだわりや努力があるもの。

コツコツ築いてきた名声やイメージを傷をつけてしまいかねない。

特にジャコの場合、発掘盤という”悪いコンディションのアルバム”が多すぎる。


せっかくジャコに興味を持った人に”不幸な出会い”をしてもらいたくない。

何事もちょっとしたきっかけで、不幸なイメージが固まってしまうのだ。
 


その昔、「スクールウォーズ」という番組があった。
 
不良高校をひとりの教師がラグビーを通じて立て直すという青春ストーリー。
 
そのドラマで”不良の番長”を演じていた〇村雄基という俳優がいた。
 
インパクトの強い顔は”悪党”そのもので”番長”にはうってつけの面構え。
 
ドラマが有名になった頃、バイト先の友人からこの”番長”の過去の話を聞いた。

 
「松〇雄基は学年をダブって、俺と同級生になったんだよ」

「奴は凶暴な顔してるけど、弱くてイジメられてたんだよ!」
 

何と!あの松村〇基は凶暴な顔つきに似合わず”イジメられていた”とは!!!

 
それ以来、ドラマで”凄みをきかす松村雄〇”を見ると下手な漫才を見るより
笑いが止まらなかった。
 
今となってはこの友人の話の真偽は解らない。
しかし僕の中での松村雄基〇のイメージは固まってしまったのである。
 
何とも”いたたまれない”話である。
 
このような過去の暴露話は時として致命傷になってしまう。
 
その人がコツコツと築いてきたものを見事に壊してしまうのである。


僕が経験してしまった悲しき「松村〇雄基のお笑いイメージ」。

 

ジャコにはこのような”不幸な結果”になって欲しくはないものである。

 


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素晴しい一年でありますように [JAZZ]

 

 

 昨年もお世話になりました。

 今年も昨年同様、よろしくお願い致します。

   

 

 昨年末に嬉しい情報が入ってきました!

 

  

 

  大阪フェスティバル 5月20日(火)

  何と、昨年に引き続いて2年連続でキースジャレットが来日します。

 それも今回はキースのソロコンサートです!

 プログラムの一切無い完全即興による神がかり的な演奏を堪能出来るのです!

 数あるキースのピアノソロの中で最も好きなアルバムは”Bregenz Concerts”です。

 

ブレゲンツ・コンサート

ブレゲンツ・コンサート

  • アーティスト: キース・ジャレット
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1997/08/25
  • メディア: CD

 学生時代、この美しいアルバムを初めて聴いた時の感激は忘れられません。

 このアルバムによってキースの虜になったのです。

 

 さてこの度のピアノソロコンサート!

 ぜひとも「ブレゲンツコンサート」のような感動を味わいたいものです。

  昨年同様に、今年のハイライトは5月のコンサートで決まりのようです!

 

 「ブレゲンツコンサート」の一部です。
 キースの即興演奏で最も美しく優しい旋律だと思います。
 よろしければ聴いてみて下さい。

 Bregenz,May 28,1981 / Keith Jarrett

 

  

 

 今年が皆さんにとっても素晴しい一年でありますように!

                               蟹道楽

 


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