Street Life [Black Music]
Randy Crawford & Joe Sample / Feeling Good
2人のアルバムはCRUSADERSの"Street Life" から二十数年ぶりである。
高校の勉強が好きだった僕は余分に受験勉強をしてしまった。(つまり浪人・・・)
しかし予備校の授業が終わって、新しい街を散歩すると新鮮な気持ちになった。
ある日の散歩中、喫茶店から愛聴盤のStevie WonderのHotter Than July が聞こえてきた。
その喫茶店は”As”という名前でテーブルゲーム機2台とカウンターのみ小さなお店だった。
カウンターには30歳位の小柄で可愛らしい感じのママがいた。
Stevie Wonder、Marvin Gaye 、Alexander O'Neal・・・等々。
何時行ってもソウル系のテープが流れていて心地良いお店だった。
ある日、一度も喋ったことが無かった大人しそうなママが僕に喋りかけてきた。
ママはソウル系の音楽が大好きだったようで、話も弾んでその日はビールまでご馳走になった。
それから僕はAsに毎日通うようになり入り浸っていた。
ママは主婦のため店を空ける時があり、僕が店番をしてコーヒーをたてたりした。
僕は愛聴盤だったCRUSADERSの"Street Life" をテープにコーピーしてこれを聴きながら
お店のオーナー気分でカウンターに入るのが大好きだった。
このアルバムはフュージョンというJAZZファンからは”中途半端”と言われたジャンルのアルバム
だがJAZZやファンク、そしてアルバムタイトルの Street Life はブラックミュージックファンを
泣かせるメロウな名曲なのである。
ママもこのアルバムがたいへんに気に入りよくお店でかけていた。
その内に僕の予備校仲間の2人もこのお店の常連客になっていた。
また、Asの近所にお好み焼き屋があり、そのお店の常連客だった予備校仲間の3人もAsに来るようになっていた。
しかし、ある日お好み焼き屋のおっさんが店に怒鳴り込んできた。
常連客だった3人に向かって「最近、来えへん思っとたらここに来とったんか!」と怒鳴った。
Asのママに客を取られたと怒っていた。
その日の夜、予備校仲間の一人が酔っ払ってお好み焼き屋の看板をボロボロに潰してしまった。
看板はママのダンナさんが全額弁償してくれた。
その日以来、僕たちとママとダンナさんの結束が固くなった気がした。
喫茶店はいつも明るく、夜になるとダンナさんが僕たちを夜の街に案内してくれた。
また、仲間の親父が事故にあい、緊急手術の時はダンナさんがみんなを車に乗せて姫路の病院まで走ってくれた。
僕たちはAsを中心に楽しい日々が続いていた。
しかし、ママとダンナさんの関係は徐々に悪くなっていった。
そして気が付くと僕の仲間内でもママ派とダンナさん派に分かれていた。
元々、ダンナさんは噂の多い人だった。
ママ派の一人がダンナさんの素行を調べるというスパイじみたことをやってしまった。
僕はこの頃から面白くなくなってAsに行かなくなった。
しばらくして、ダンナさんからAsを閉めるという連絡があり、最後にみんなで食事をした。
Asでの最後の宴会はダンナさん、ママ、そして僕の予備校仲間全員が集まっていた。
その時、ダンナさんとママは既に別れていたようだった。
ガキの僕たちが家庭の中に立ち入り過ぎたような心苦しい感じが残ってしまった。
11月になり受験を目の前にした僕たちは遊ぶことも無く受験体勢にはいった。
そして春になり、僕は大学が東京に決まって上京した。
ある日、渋谷駅の構内にあったアートコーヒーで偶然ママに出会った。
ママは東京に来ているという噂は聞いていたが、この広い東京で会うとは思ってもいなかった。
懐かしさもあり2時間以上喋った。
ママから「”Street Life”のテープを無くしたからコピーしてね」と頼まれた。
住所を教えてもらい、びっくりした。僕の住んでいた駅の2つ先の駅だった。
「テープ持ってきてくれる時はご飯作ってあげるからね!」と言ってくれた。
しかし、”家庭の中に立ち入り過ぎたような心苦しい感じ”を僕は引きずっていた。
何となく、ママに連絡をするのをためらっていたのだ。
それから、一年くらい経ってテープを渡そうと思いママに電話をしたが既に引っ越していた。
新譜の Randy Crawford & Joe Sample / Feeling Good は "Street Life" ほどの
”黒さ”は無くなり軽い音になっていたが懐かしい音だった。
ママに”Street Life”のテープをまだ渡せてない事を心残りに感じている。
それも、若い頃の大切な思い出です。
あの時、こうしていれば・・・ 誰でも持っている苦い想いですよ。
音楽を聴く事によって、当時の自分の気持ちを垣間見る。
良くも悪くも、素晴らしい。
by たいへー (2006-11-12 08:09)
妻のほうです。
甘酸っぱ~い・・・・
久し振りに聴いた音楽で、思い出すことってありますよね。
その頃しごした場所とか、若かった自分とか。
ランディ・クロフォード、年取りませんねぇ、びっくり!
by ベアトラック (2006-11-12 12:41)
夫の方です。
苦い経験も、青春の大切な思い出ですね。
今、サンタフェは11日(土)夜の9時半です。ホテル1階のバーで、ビールをチビチビやりながら拝見しています。
Hotter Than July、懐かしいです。LP、どこかにあるハズなんですが・・・
by ベアトラック (2006-11-12 13:30)
青春の一コマですね。
2ndLTは、CrusadersのTHE 2nd CRUSADEというアルバムを擦り減るくらい聞きました。
by 2ndLT (2006-11-12 14:51)
最近@軽さのなかに@ここちよさを感じます。
納得***
by megumi (2006-11-12 17:43)
携帯もない時代は連絡しづらかったですね。
今だったら気軽にメールでもできるのに。
by koto (2006-11-12 19:43)
たいへーさん
世の中には全く音楽に興味の無い人っているんですよね。
信じられないことですが・・・
たいへーさんも同じでしょうが、僕は音楽が無いとやっていけませんね!
但し、音楽を聴いて辛い事を思い出すこともありますがね。
by 蟹道楽 (2006-11-12 19:48)
ベアトラック奥様
ありがとうございます。
まさしく、若かったのです!
Randy Crawford はベアトラック奥様の好みでは?
by 蟹道楽 (2006-11-12 19:50)
ベアトラック 様
お疲れ様です。
多分充実した時間を過ごされていると思います。
>>ホテル1階のバーで、ビールをチビチビやりながら・・・
とはうらやましい!
Hotter Than JulyのLPは僕も持っております。名盤ですよね!
by 蟹道楽 (2006-11-12 19:55)
2ndLTさん
こんばんは
THE 2nd CRUSADE は聴いた事がないです。
このころのCrusadersはファンクっぽい感じなんですかね?
2ndLTさんが擦り切れるまで聴いたアルバムならぜひ聴いてみようと思ってます。
by 蟹道楽 (2006-11-12 19:59)
megumiさん
いつもありがとうございます。
守備範囲が広いmegumiさんはJAZZ関係も聴かれるのでしょうか?
Randy Crawford & Joe Sample は軽い感じですが、いい感じです。
よかったら、聴いてみて下さい!
by 蟹道楽 (2006-11-12 20:01)
kotoさん
こんばんは!
あの時、携帯やメールがあっても、ママに連絡をするのはためらっていたでしょうね!
若かったですから!(笑)
by 蟹道楽 (2006-11-12 20:03)
私にもそんな風に生活の一部だったり青春の(クサイなぁ)大切なものが
いっぱいに詰まったお店がありました^^
蟹道楽さんと同じようにたまにお店をまかされたりね♪
高校生の頃からの付き合いで、やっぱりいろんなことがありました
自分から決別した場所になりましたが、今思うとやっぱりあそこがあったから
今の自分があるのかも・・・というのは言いすぎだとしても、たくさんのことを
学んだ気がします 本当に楽しかったもの!
by かおり (2006-11-12 20:17)
青い花さん
18歳そこそこの頃は特にお店というものに魅力を感じるのでしょうか?
押し付けられて勉強するのと違って、自分で”創りだす”楽しみを求めているのでしょうかねえ。
青い花さんのまかされたお店は何屋さんでしょうかね?
青い花ママのお店なら、蟹は入り浸って、住み込むでしょう!
by 蟹道楽 (2006-11-13 00:14)
カウンターだけのコーヒーショップでしたの!
でも、小さなオーブンでバタークリームのケーキやプディングなんかも
焼いていて、そこでいろんなことを見て覚えたんですよ♪
登校前に立ち寄ってミルで挽かれるコーヒー豆の香りを楽しんでいました
この記事を読んでいてそのお店のマスターとママさんのことがちょっとダブったりしましたが、私が離れたのは別の理由・・・そのうち青春の思い出として語っちゃおうかなぁ^^ そこにはいつも落書きノートがあってね、私がコメンテーターみたいなこともやっていたんですよ♪ちょっとした名物だったんです。
16歳から19歳くらいの頃でしたね
もちろんレコード持込みで・・・(笑)
by かおり (2006-11-13 01:05)
青い花さん
青い花さんらしいお店ですね。
そういえば、昔(いえ、失礼!以前と言っておきましょう)落書きノートのあるお店ってありましたよ!
適当な事かいても、ちゃんと親切なコメントの返事を書いてくれてました。
あれって、青い花さんのような方が書いてくれていたのですか!
少女時代の青い花さんの”青春の思い出!”是非とも書いてください!
蟹はハンカチを用意しておりますよ!
by 蟹道楽 (2006-11-13 01:21)
心地いい寂しさを感じるお話ですね。
蟹道楽さんのとっても素敵な青春のカケラをみせてもらった気がします。
簡単な約束をはたせなかったままの別れは本当に心残りですよね。
でも、こうして思い出すというところが、誠実な蟹道楽さんなんだと思います。
蟹道楽さんこそ文才ありますよ。村上春樹の小説を読んでいる気分になりました♪
by moon (2006-11-13 09:21)
moon さん
久しぶりに会ったママに「遊びにおいで!」「近くやし、また会おうね!」と
何度も誘われたのに、僕は”心苦しい感じ”を引きずってました。
今から思えば、あまり気にする事はなかったのですが・・・
結局、連絡を入れなかった後味の悪さが残ってしまいました。
頼まれたテープも渡してませんしねえ。
史上最大のお褒めをいただきありがとうございます。
しかし村上春樹はもちろん、村上ファンが気を悪くするでしょう(笑)
by 蟹道楽 (2006-11-14 00:17)
蟹さんの、青春、しかと聞かせていただいたよー。
はぁー、、、、「人生は小説よりも奇なり」そのままだねー。
アーティスト音痴の私でも、スティーヴィーなら直ぐ分かる。
魂に染み渡る彼のエネルギーは、大好き。
それと、エイズ基金のバンドエイドの時の彼らも大好き。ハートがあるよね。
by norman (2006-11-14 12:16)
引き込まれるように読みました。
なんて、ほろ苦い思い出でしょう...
「ママ」に久しぶりに再会できたのに、連絡しづらかったお気持ち、とてもよくわかります。でも、短くも楽しい日々を過ごされたことだけは、これからも蟹道楽さんの記憶に残り続けるのでしょうね。
ビル・エバンスのMoon Beams、日本の実家にLPがあるのですが、こちらで聴けなかったので、先週CDを買ったばかりでした。スコット・ラファロがいなくなって、あまり注目されないアルバムですが、大好きな一枚です。この季節に聴くとより感傷的な気持ちになってしまいますが、美しい曲ばかりなので一杯やりながら毎晩のように聴いています。
by 鯉三 (2006-11-14 19:11)
norman さん
こんばんは。
実は皆様からコメントを頂くたびになんだか恥ずかしくなってきました。
スティービーワンダーはこのHotter Than Julyの頃までが絶頂期でした。
今現在もたいへんに素晴しいアルバムを作っているのに、盛り上がらない。
多分、聴く人の感覚が変わってきているのでしょうか?
時代が変わってきたのでしょう。さびしい限りです。
by 蟹道楽 (2006-11-15 00:04)
鯉三 さん
ありがとうございます。
何にも考えずバカを出来たこの頃はやはり楽しかったですね。
このAsのあった場所は今はビルが建っていて面影もありません。
お好み焼き屋も潰れているみたいです(笑)
歴史に残る名盤ではありませんが、名曲ばかりのMoon Beamsは僕のもっとも好きなアルバムです。
気が付いて頂き非常に嬉しいです。
鯉三 さんと同じように一日の終わりに水割りを飲みながら聴く事が多いです。
ゆったりとした気分に浸り、疲れがとれていくのです。
by 蟹道楽 (2006-11-15 00:16)
カッコイイですね~
あまり洋楽聴かないので参考になります
ベアトラックさんて2人居るんですねビックリしました!
by (。・_・。)2k (2006-11-15 15:48)
2Kさん
こんばんは!
ベアトラックさまは、ダンナさまと奥様さま、御二方からご贔屓にして頂いております!
by 蟹道楽 (2006-11-16 00:23)