WALK OUT TO WINTER

「スキーに行きませんか？」 

グループ会社のMANIちゃんからお誘いをうけた。
彼女はシステム関係の会社で営業をしている２６歳の女の子。
素直でがんばりやさん、そのためお客さんからの評判も良い。

以前、知人の会社で部署を新設するためＯＡ機器一式を導入する話があった。
その時、知人にNAMIちゃんを紹介してＯＡ機器一式を買ってもらった。
それ以来、僕はNAMIちゃんと仲良しになった。

「ぜひ、一緒に行きましょう！」とNAMIちゃんは誘ってくれるのだ。
 

「さて、どうしたものだろう・・・」

NAMIちゃんは２６歳。
一緒に行くメンバーも若手中心だろう。
最近の若手はスノボ派ばかりでスキー派はほとんどいない。
そもそも、我々世代はスノボ派は苦手なのだ。
ゲレンデ中、所構わず集団で座りこむ姿は「お前らサル山のサルか！」と言いたくなる。
また、この行為は他の客にとって事故の元になり危険で迷惑極まりない。

それとなくNAMIちゃんに、スキーツアーの詳細について尋ねてみた。
 

● メンバーについて

　　グループ会社の社員が多いです。
 
　　・・・顔なじみもいるし、まあええか

● スキー派とスノボ派について

　　スノボ派が多いですがスキーの人もいます。
 
　　・・・まあ、こんなものか・・・

● NAMIちゃんは何派？

　　スキー派です！
 
　　・・・おお、若いのにエエ子や！感心、感心！

● ちなみに、NAMIちゃんのスキーレベルは？
　　
　　初心者です！２回目です。
　　実は人並みに滑れるようになりたいので教えてもらいたいのです！

　 ・・・んんん、なかなかこれは難しい。
 
初心者を教えるという事は難しいのである。
一番心配なのは「スキーが嫌いになるかもしれない」という事なのだ。
教え方がマズかったり、本人が思うようにスキーをマスター出来なかったら
スキーが嫌いになってしまうことがある。
 
これは教える立場としては責任重大である・・・
 
しかし、若い女の子に頼られているのである。
男みよりに尽きるではないか！
今回は徹底的に付き合おう！

という事でスキーツアーに参加することにした。
  
スキーツアーに行くのは何年ぶりだろうか？
ああ～、あの楽しかった青春時代（バブル期）を思い出す・・・・・

しかし、いきなり問題発生！
久しぶりに着たスキーウェアだったが・・・
 
「アカン！スキーウェアが縮んどる！」

クリーニングのせいだろう・・・近所のクリーニング屋はＹシャツもよく縮める。

　

また、メンテナンスを怠ったスキーはエッジが完全に錆びている。
昔はマメにスキー道具を手入れしていたものだったが・・・
「まあ、滑っている内に、錆びも取れるだろう！」とアバウトになってしまった。
 
そして一番の予想外の事は、 「ゲレンデがめっちゃ寒い！」

大げさではなく、五臓六腑に染み渡る寒さなのだ。

若かりし頃、ゲレンデが寒いなど感じなかったのに・・・・・
そんな僕とは対照的にNAMIちゃんは元気いっぱい。
「ぜったいに上手くなるぞ！」と気合も十分！
早く練習しましょう！　と僕は引っ張っていかれたのだ。
 
NAMIちゃんはやっとボーゲン（ハの字）が出来るレベル。
キツイ斜面は無理なので中腹の緩斜面で練習する事にした。

最初は、暖かい日差しが射していたが山の天気は変化しやすい。
１時間ほどで怪しい雲行きになり雪が降ってきた。
必死のNAMIちゃんは寒さを忘れて悪戦苦闘している。
一方僕は運動量が少なく、かなりの寒さで震えが止まらない。
みるみる雪の量も増えて頬に当たる雪が非常に冷たい・・・・・

ああ～ストーブが恋しい・・・

そうして滑っている内にゲレンデ下のレストハウスまで下りてきた。

「やれやれ、やっとこれで暖かいレストハウスでコーヒーが飲める」・・・
・・・と思いきや、NAMIちゃんはリフトに向かっているではないか！

「ちょっと、ちょっとNAMIちゃん、レストハウスで休まない？」
と僕は呼ぶが、NAMIちゃんは全くその気は無いようだ。

「えぇ～この吹雪でまだ滑るんかいな・・・」と立ち止まる僕。

 そんな僕をNAMIちゃんは、キリッとした目で見つめている。

まさに 「早よ！こっち来んかい！」 と目が語っているのだ。

女の子には”NO！”と言えない優柔不断な蟹道楽。
奴隷状態で吹雪の山中へと連れていかれるのだった。

不幸は重なるものである。
この日は午後から大荒れに荒れた天気だった。
リフトが何度も止まる悪天候！
猛吹雪となり、ついに雪が竜巻状に舞っていた。
視界もほとんど無くなり、また吹雪のために目も開けていられない。
頬を直撃する雪はもう冷たさを超えて痛いのである。
しかし、NAMIちゃんはまるで何かに取り付かれたように練習している。 

「もう、アカン・・・・・」　
 
僕の手や足の感覚が無くなってしまった。
寒さを通り越して僕はだんだん眠くなってきた。
雪山で遭難して　「眠るな！眠ったら終わりだ！」というテレビの１シーンを思い出した。

あまりの吹雪の為、誰もいなくなったゲレンデ。
そこには必死に練習するギャルと倒れそうな中年男の二人の姿しかなかった。

そしてリフト券の切れる5時になった。

長い長い一日が終了した。

まるで南極観測隊員のように僕らの帽子やウェアには雪が氷状に固まっていた。


その日の夜、楽しい宴会！・・・・・のはずだった。
しかし、僕には宴会の気力はもう残っていなかった。
僕は夕食もそこそこに済ませて熟睡してしまった。

そもそも僕は”私をスキーに連れてって”世代なのだ。

　　


旅の道中はみんなでワイワイ観光し、スキー場では気楽にスキーをする。
そして「一番の楽しみは5時以降のアフタースキー」というリゾートスキーだった。

スキーとは僕らにとって寒い冬、遊びに行くきっかけだったのだ。
 
今回のような”根性スキー”をしたのは初めてだった。



翌日は昨日がウソのような晴天になった。

しかし、昨日の寒さがこたえたのか、僕は風邪をひいたようだった。
体中がダルくて何だか熱っぽいのである。
しかし寝込んでしまうと、みんなの楽しいツアーに水を差しかねない。
何とか騙し騙しスキーをすることにした。

一方、NAMIちゃんは努力が実ってめざましく上達していた。
彼女の表情は前日の”鬼気迫る目”ではなく、いつもの優しい目になっていた。


僕達は昨日、吹雪の猛特訓をした斜面に向かってとリフトに乗った。

冬の柔らかな陽射しを受けて、二人でのんびり乗るリフトは暖かかった。

昨日は気付かなかったがNAMIちゃんの”ほのかなシャンプーの香”を感じながら
 
「僕の原点はリゾート（バブル）スキー」 という事を改めて認識した。
 
 

 

帰りの車の中で徐々に風邪が悪化した蟹道楽。
翌日は寝込んで「二度と根性スキーはしない！」と心に誓ったのだ。



WALK OUT TO WINTER　　/   ＡＺＴＥＣ　ＣＡＭＥＲＡ

Aztec Cameraの1st、2ndアルバムは学生時代からずっと愛聴盤だ。
このライブバージョンは１２inch シングルの”still on fire”のＢ面の収録されている。
学生時代、青山にあったパイドパイパーハウスという伝説のレコード屋で見つけた。

　

再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら

このバンドに関しては”青春”というクサい言葉を何の抵抗も無く使える。
この”WALK OUT TO WINTER"は大学生の時ウォ―クマンでよく聴いた曲である。
この曲は何時聴いても清々しい気持ちになる。

”Walk out to winter”
”Chance is buried just below the blinding snow.”

３月になったが、今年はまだまだ寒そうだ。
この曲を聴くと 「寒い冬でもがんばろう」 という気持ちにさせてくれる。 
 

コメント 27

やっぱりスキーウェア、縮んでいましたか！（笑）
我が家では、昔はいていたジーンズなんかが、まさにそうですね（苦笑）
Aztec Cameraは、うちの女房のお気に入りだったような気がします。
青山のパイドパイパー、あ～なつかしい～。
風邪は治りましたか？　私は、スギ花粉症の真っ盛りです。
by ベアトラック (2008-03-01 16:11) 

おじさんがスキーに行くと、そうなる。
今年、子供と初めてスキーに行ったが、
もう、昔の感覚はすっかり衰え、
板の長さと重さを持て余し、筋肉痛は３日後に来て、
つくづく年齢を感じました・・・
子供達はボーゲンのまま、イッキの爆走！！
子供はタフや。（汗
by たいへー (2008-03-01 20:02) 

スキーウェアって縮むんですね～
私のスキー板は「ティディベア」の柄でしたがもう限界のようです。
そろそろ新しい板にしなくっちゃ。
姪っ子がまさに根性スキー練習中です。麻伯母は根性なしなので
すぐに追い抜かれそうです・・・。

by しゃおたお (2008-03-01 21:20) 

ワタシはスノボー世代かな。
スキーもやったコトあるけど、みんなが上手過ぎて止めちゃいました。
でも、ワタシも今スノボー行くなんて想像出来ない。
きっと想像出来ない以上に寒いと思う。
by nico (2008-03-02 10:43) 

こんにちは。
ご無沙汰しています。
スキーに行かれたのですね。しかも若い女の子のご指導に！

＞若い女の子に頼られているのである。男みよりに尽きるではないか！
今回は徹底的に付き合おう！

さすが蟹道楽さん！おかげで、その女の子も上手く滑れるようになってよかったですね。楽しいお話をどうもありがとうございました。
by sweet_grass2006 (2008-03-02 13:02) 

今回も笑わせていただきましたが、少し寂しさも覚えました。
もう勢いだけで何かができるという年ではないのだな、と。
あっ、すみません。自分に置き換えて考えただけです。
わたしはスキーはまったくだめなのですが、年子の妹はなんなくスキーからスノボに切り替えて家族で楽しんでいるようです。
by 鯉三 (2008-03-02 19:00) 

お寒い中お疲れさまでしたー(笑)
ん？風邪引きがおソロですね♪
そんなモンは揃わんでもいいですか？

そうかー！ゲレンデが寒かったのかー！！
それは末期症状かもしれない・・・
寒いなんて以前は感じたことがなかったと思います
せっかく26歳の女の子に頼られたんですから
そこはイイとこ見せなくっちゃね♪
ああ・・・・涙が・・・・・＾＾；
by 青い花 (2008-03-02 22:43) 

何となくブログタイトルと、かぶるかしら・・・。
「楽しくなければスキーじゃない！」
リフトでの暖かいひとときが、ごほうびということで・・・。（＾＾；
ところで、
NAMI ちゃんに、夏にマリン･スポーツに誘われたら どうします？

by びっけ (2008-03-04 00:35) 

ベアトラックさん
僕ももったいないリーバイスがあります。
スキーウェアはまだ、ゴムの部分等があるので何とかなりますけれども、
ジーンズはアウトですね。
さすがベアトラックさん！パイドパイパーをご存知ですね！
あのお店ではルーリードとかの探していたレコードよく発見した記憶があります。
ちなみに風邪は何とか楽になりましたが、僕も花粉と戦いが始まりました。

by 蟹道楽 (2008-03-04 00:43) 

たいへーさん
やはりですか・・・
筋肉痛が３日後に出るのは僕だけではなかったのですね！
（実は、風邪の為に筋肉痛になったと思い込んでいます）
子供の直滑降ボーゲン！
凄いですよね！絶対真似できません。
子供は恐怖より楽しさが勝っているから出来る技なのでしょう！
また、子供は転んでも怪我しませんからね。

by 蟹道楽 (2008-03-04 00:43) 

しゃおたおさん
スキーウェアは縮みます！（断言！）
”クリーニング屋が下手クソだった！”という事にしておきましょう。
へ～「ティディベア」のスキー板があるのですか？
国産なのでしょうか？
麻さんの板が限界というのは麻さんの高いレベルに板がついていけなくなったのでしょうか！
ちなみに女性のスキーは根性無しのほうが”可愛くて”僕は好きです！


by 蟹道楽 (2008-03-04 00:45) 

nicoさん
僕も一度だけボードに乗ったことがあります。
後輩のボードに乗ってすぐに転んで後頭部を強打しました。
nicoさんはまだ、お若いでしょうからまだまだゲレンデも寒くないでしょう！
がんばってください！

by 蟹道楽 (2008-03-04 00:45) 

sweet_grass2006さん
最初はスキーツアーを楽しむ為に行くはずだったのですが、気がつけば練習のお付合いになっていました。
僕は”お供”であっただけで、彼女のがんばりで上達したのです。
今にしておもえば、彼女のあの熱意は凄いものでした。

by 蟹道楽 (2008-03-04 00:46) 

鯉三 さん
いえいえ、僕はそういう年になってしまいました。
ゲレンデで寒くてたまらない！と感じるようになったのは体だけでなくて、”ワクワクする気持ち”も無くなったのような気がします。
最近まで今まで勢いだけ（ストレート勝負）で過ごしてきた（と思い込んでいる）のですが、近頃は知らず知らずの内に”変化球”も多様しているような気もします。
by 蟹道楽 (2008-03-04 00:48) 

青い花さん
我々、「風邪ひきお揃い」ですか！
それも僕たちが”青い糸”でつながっている証拠でしょう！
末期症状とは・・・やはりそう思われますか？
26歳の女の子に頼られているというか・・・保護者にされたというか・・・
まあ、”イイとこ見せる”という意識はありませんでしたが、あの吹雪の中
付合ったというのは結果的に”ええカッコ”だったのかもしれません！
でも、もう遠慮したいものです。

by 蟹道楽 (2008-03-04 00:49) 

びっけさん
本当に、あの寒さは今まで体験した事が無いものでした。
ごほうびのリフト！
あの暖かいリフトに乗っている時は眠ってしまいそうでした。・・・風邪のため余計に眠かったのですが。
マリンスポーツですか・・・
いや～裸になる（この腹を公開する？）のは「医者に止められていますから・・・・・」

by 蟹道楽 (2008-03-04 01:19) 

こんばんは、はじめまして。
スキーには疎いのですが、「WALK OUT TO WINTER」は大好きです！！
爽やかな名曲ですね。
伝説のパイドパイパーハウスで購入されたとなればさらに素敵なことですね！
by 都市色 (2008-03-04 01:47) 

スキーウェアが縮んだんじゃなくて・・・スミマセン
若いときは寒くなかったなぁ
高校のときは年中ナマ足ですごしてましたし。

by koto (2008-03-04 11:02) 

確かミズノのテディベア・アラモードだと思います。
クマ柄が可愛いので即決で買いましたが、
かなり長く使ったので・・・経年劣化の恐れアリです。
決して私が技術向上した訳ではありません。
by しゃおたお (2008-03-05 22:51) 

都市色さん
はじめまして。
コメント＆nice!ありがとうございます。
このwalk out to winter も初めて聴いて二十数年になりますが、飽きる事無く聴いております。
パイドパイパーハウス、やはりこのお店に特別な思いを持っている方は多いのでしょうね。

by 蟹道楽 (2008-03-07 00:52) 

kotoさん
いや～、近所のクリーニング屋のおやじは特殊技能を持っていてスキーウェアも縮めるんですわ・・・”もうエエちゅうねん！”
そうです、肥えてしまいました・・・
女子高生のkotoさん”生足”！
さぞかし、可愛かったのでしょうね！
いやいや、今はお美しいのでしょう！
by 蟹道楽 (2008-03-07 00:55) 

しゃおたお　さん
ミズノ製ですか。
ミズノって地味ながら堅実な製品を出していますね。
スキー板に関してはアトミック、Ｋ2，サロモンと海外製品しか使った事がありません。
テディベア アラモード、ググってみると7年位前の板でしょうか？
ということは、カービングではないのでしょうか？
今、僕の使っているサロモンはカービングですが、”驚くほど”よく曲ります。
今までの板の感覚で曲がると回転してしまうほどですよ。
by 蟹道楽 (2008-03-07 01:03) 

xml_xslさん
ありがとうございます。
by 蟹道楽 (2008-03-07 01:04) 

正解です！
友達が「上手に滑れないのにカービングなんて恐れ多い」と
断言したので長～く使ってました。
レンタルスキーでカービング使ったら曲がる曲がる（笑）
今シーズンはレンタルで終わりそうです。
by しゃおたお (2008-03-07 08:55) 

しゃおたおさん
度々のご訪問ありがとうございます。
初めてカービングに乗った時、滑り方が解らなくなった事を思い出しました。
エッジの切り替えがイメージ通りに出来ない・・・・・
でも慣れてしまうと、カービングは楽出すね～
もう、昔のスキーには乗れません！
じっくりと素敵な板を選んでください！

by 蟹道楽 (2008-03-08 01:13) 

あっ！知世ちゃんが『バンッ！』ってやってるシーンだ!(^^)!
ユーミンファンゆえに、ビデオで数回見ております＾＾！
『ブリザード』を聴いている時に、何も知らないムスメに「ここで、三上博がね・・・」と説明してウザがられています（なんのこっちゃ！）
スキーウェア、私は絶対に入らないと思います。でも、結構高かったので捨てられずにいます(>_<)　っていうか、私も体が無理！と言っています(^_^;)
by ぐれなでぃん (2008-03-16 00:22) 

ぐれなでぃん さん
まだ蟹道楽が若かりし頃、ギャル達（ギャルも死語になりましたね）と一緒にスキーツアーに行く時は、事前に「私をスキーに連れてって」のビデオを観て、気持ちを高めておりました（笑）
あの頃、この映画のおかげでスキーシーズンは白馬周辺のホテルが満杯でした。僕らの場合は会社の保養所があったのでラッキーでした！
by 蟹道楽 (2008-03-16 15:45)